仮想通貨そのものには様々な特徴がありますが、ある通貨とある通貨の特徴を組み合わせた通貨があったらすごくいいのにと思ったことはありませんか。
今回ご紹介するクアンタム(Quantum:QTUM)はなんとビットコイン(Bitcoin)とイーサリウム(Ethereum)の特徴を兼ね備えた仮想通貨です。
クアンタム(Quantum:QTUM)とは
クアンタム(Quantum:QTUM)は公開日2016年12月29日と1年以上前に公開された仮想通貨ですが、注目されたのは2017年12月。
それまでは、ほとんど誰も知らないような仮想通貨でした。
2017年12月といえば、仮想通貨が大いに話題になり、1ビットコイン=200万円を超える値が付いた月として、覚えている人も多いでしょう。
クアンタムはシンガポールで開発された仮想通貨で、開発者に有名な韓国人エンジニアが参画しています。
クアンタムの特徴として挙げられるのは、やはりビットコインの良いところとイーサリアムの良いところを組み合わせたところ。
ポイント
ビットコインのブロックチェーンは、最初に開発されたこともあり、誰でも自由に使えるというコンセプトがあります。
そのため、セキュリティと軽量さを兼ね備えているのです。
ポイント
スマートコントラクトとは「契約に基づいた取引記録を残すだけでなく、その契約の履行まで自動的に行ってくれる仕組み」です。
この仕組みは今後のビジネスシーンで大いに活躍するのではないかと期待されています(詳細は後述)。
クアンタムとは、こうした軽量で誰もが扱いやすいブロックチェーンと、ビジネスへの応用が期待されるスマートコントラクトのどちらも搭載した、将来性のある仮想通貨といえるのです。
クアンタムは2018年3月現在、仮想通貨全体では20位前後行き来しています。
クアンタムのチャート・値動き
クアンタムはどのように値動きしているのでしょうか、チャートを見てみましょう。
2017年12月には大きく値を上げたクアンタム。
それまでは1,000円前後の動きでしたが、ビットコインの急激な値上がりに引きずられるように、一気に7,000円台、一時は8,000円の値を付けたこともあります。
その後、今年に入ってから、仮想通貨全体の値下がりに引きずられ、再び1,000円台まで落ちてきているのがよくわかるでしょう。
全体的にクアンタムの値上がりの理由は「将来性」や「期待感」といったものが多く、新しい機能が実装されたとか大きなイベントを行ったとかそういうことは2017年ではありませんでした。
ただ、設計思想は非常に注目されている通貨なので、新しい技術の実装やクアンタムに連なるICOが注目されるといったことが上手く絡み合えば、また大きく値を変動させる可能性のある仮想通貨です。
クアンタムのここがスゴイ!
クアンタムの特徴について詳しく追っていきましょう。
注目すべきポイントは4点です。
プルーフオブステーク(Proof of Stake:POS)
クアンタムのマイニングシステムはProof of Stakeを採用しています。
Proof of Stakeとは、通貨の保有量に基づいて抽選を行う仕組みで、イーサリアムにも導入されている仕組みです。
通貨は取引手段として利用されなければその価値を欠損させてしまいます。
そこで、多くの通貨を持つ人はその通貨を多く利用するだろうと予想され、たくさんの通貨を持っている人ほどその通貨を流通させたいと考えているはず。
加えて、通貨の価値が下がれば、たくさん通貨を持っている人ほど損失を大きく受けます。
このような思想の元、Proof of Stakeは採用されているのです。
また、このProof of Stakeは、ビットコインなどのマイニングシステムであるProof of Workが抱えている、「一部マイナーによってマイニングが独占されてしまう」という問題を解決できます。
さらに、Proof of StakeはProof of Workに比べてプレイヤーやブロックチェーンに対する負担が少ないため、取引の遅さという問題も解決できるのです。
スマートコントラクト(Smart Contract)
スマートコントラクト(Smart Contract)は、今後のビジネス契約を変えることが出来るのではないかと大いに期待されている技術です。
スマートコントラクトとは「契約に基づいた取引記録を残すだけでなく、その契約の履行まで自動的に行ってくれる仕組み」と先述しました。
より具体的に内容を見ていきます。
スマートコントラクトを搭載していない仮想通貨のブロックチェーンでは、
「AさんがBさんに1BTC送った」
「BさんがAさんの1BTCを受け取った」
といった、相互の情報しか記録できません。
しかし、スマートコントラクトを導入した仮想通貨であれば、
「AさんがBさんから1BTC借りた。返済期限は1か月後」
といった複雑な契約情報を記録できます。
しかも、返済期限が来たら自動的に返済されるということも行うことが出来るのです。
ビジネスにおける契約は、所有権や貸借権の移転と金銭の授受に時間的なギャップがある点が非常に難しい問題でした。
このギャップを埋めるために契約書という仕組みが作られ、さらにその契約書の正当性を守るために印紙を貼ったり割り印を押したりしています。
スマートコントラクトがビジネスに応用されれば、こうした契約書管理のコストを大幅に圧縮できる可能性があるのです。
UTXO(Unspent Transaction Output)
仮想通貨では、ある人がいくら使っていくら所持しているかという取引データを管理する方法として、アカウントベースの管理方法と取引データベースの管理方法の2種類があります。
この2つのうち取引データベースの管理方法をUTXO(Unspent Transaction Output)と呼び、ビットコインで導入されている仕組みです。
一方、アカウントベースの管理方法はイーサリアムで導入されています。
アカウントベースによる管理方法は、直感的に簡単に理解でき、いうならば銀行通帳の管理の仕組みと一緒です。
一方、UTXOでは誰々がいくらいくら利用した、受け取った、送金したといった仮想通貨が移動した記録だけを管理した仕組み。
ポイント
これは、アカウントベースの管理方法では、取引による足し算引き算の「答え」が、UTXOでは取引による足し算引き算の「数式」が記録されているといえるでしょうか。
アカウントベースとUTXOではそれぞれ実装メリットが異なります。
まず、アカウントベースですが、実装コストが非常に低いということが挙げられます。
一方で、UTXOでは匿名性やセキュリティが非常に強固であるという特徴が注目されるでしょう。
また、スケーラビリティ問題では少々事情が複雑になります。
管理すべきデータを一目見るとアカウントベースのほうはデータ量が少ないように見えますが、管理すべきデータが少ないということは同時にセキュリティの問題を抱えていることにもなるため、この問題を解決するための対処データを一緒に管理している場合があるのです。
これは、仮想通貨取引に必ず付きまとう2重支払い問題に対処しなければならないためです。
2重支払いとは同じコインを異なる複数の相手に支払う方法のことを指し、この問題に対応できない仮想通貨は取引価値を持たないほどの重大な問題です。
UTXOの管理方法では、取引データそのものを管理するため、2重支払い問題はほとんど発生しませんが、アカウントベースの管理方法では、取引が行われるトランザクション(前の所有者は誰か)というデータは軽視されるため、そのトランザクションが本当に正当なものかは、受け取ったアカウントからは追跡が出来ません。
実際、イーサリアムにはワンタイム識別子を付ける技術が実装されているため2重支払いは起こりにくい状況でしたが、イーサリアムクラシックが生まれた際の混乱に乗じて、多くの2重支払いが発生していました。
クアンタムは、こうした技術的な議論からUTXOを導入しています。
Account Abstraction Layer(AAL)でビットコインとイーサリアムの両メリットが活きる
先ほどUTXOの特徴について確認しましたが、イーサリアムではセキュリティの弱いアカウントベースによる管理方法が採択されていました。
これは、実はイーサリアムが開発された当時では、UTXOとスマートコントラクトの相性が悪かったためといわれています。
そこで、クアンタムは、この相性を解決するためにAccount Abstraction Layer(AAL)という仕組みを導入しました。
Account Abstraction Layer(AAL)は取引システムを複数のレイヤー(断層)に分けて管理する仕組みです。
ビットコインとイーサリアムの良いところどりの仮想通貨といわれるクアンタムですが、まさに良いとこどりをするための技術といえるでしょう。
Account Abstraction Layer(AAL)により、本来であれば技術的に邪魔しあってしまう、ビットコインとイーサリアムのオープンソースをうまく融合させることに成功したのです。
クアンタムの課題とリスク
中国の影響
クアンタムは、中国の大手IT記号のアリババの元主要メンバーが参画しているともいわれ、中国資本との関係がある仮想通貨プロジェクトです。
当然クアンタムは中国政府とも良好なコミュニケーションをとっていますが、仮想通貨に対して敵対的な姿勢を崩さない中国政府の今後の動きによっては、発展が大きく阻害される可能性があります。
クアンタムの将来性が中国の動きと連動しているというのは少し気になるところでしょう。
新しいアップデートがない
クアンタムの開発スケジュールを見ると、ここ最近、新しいアップデートが予定されていないというのもあまり値を上げていない理由となるかもしれません。
とはいえ、まだまだ開発真っ只中ともいえる仮想通貨であるため、すぐにアップデートというのは難しいのかもしれません。
開発スケジュールによると2018年の早い段階で、クアンタムの技術を応用したスマートフォンアプリ開発のテストモデルが発表される予定とされています。
ぜひ、注目していきましょう。
まとめ
ビットコインとイーサリアムの良いとこどりを狙った仮想通貨、クアンタム。
技術的にも優れたところを持っており、将来性を感じた人も多いのではないでしょうか。
また、ビットコインとイーサリアムの良いところりということは、それぞれの需要に影響しやすい仮想通貨であるといえるかもしれません。 2018年にはアプリケーションの発表なども予定されています。
仮想通貨クアンタム(Quantum)、ぜひ、注目してみてください。