開発者に日本人がいたことなどから、日本の仮想通貨プレイヤーに人気のある仮想通貨がネム(NEM:XEM)です。
2018年1月26日にコインチェック事件の最大の被害者ともいわれ、約5億ドルの損害を出したという点でも注目されました。
最も、あの事件においてはコインチェックのセキュリティが非常に杜撰であったという点が重要であり、ネム自体のセキュリティの問題は一切関係ありません。
むしろ、ネムは仮想通貨の中ではかなりセキュリティがしっかりしている仮想通貨として知られています。
そんなネムですが、今後はどのような発展を見せるのでしょうか。
ネム(NEM:XEM)とは
ネムとは「New Economy Movement(新しい経済運動)」というプロジェクトの略称を表しています。
実際の仮想通貨の名前はXEM(ゼム(です。
ただ、プロジェクト名がそのまま仮想通貨の名前として定着しているため、多くの人はネムで覚えているでしょう。
ネムが掲げている「New Economy Movement」とは、金銭的な自由・分散化・平等などを目的とした新しい経済圏の創出という意味になります。
非常に理想の高い仮想通貨といえるかもしれませんが、その性能はイーサリアム(Ethereum)やリップル(Ripple)などと比べても非常に高い仮想通貨です。
マイニングシステムを利用しないハーベスティング、PoWやPoSとは違いより平等な取引空間を生み出すPoI、そしてVISAカードにも匹敵するほどの承認速度を可能とするカタパルトの開発など、ネムの特徴を上げればキリがありません。
仮想通貨を利用した金銭的な平等という思想は果たしてどこまで発展できるのでしょうか。
ネムのチャート・値動き
ネムの時価総額は2018年4月30日現在、仮想通貨全体でも14位と中位から上位を行き来するほどの人気を誇っています。
ネムが公開されたのは2015年3月31日。そこからはしばらく注目されていませんでした。
2016年7月にZaifに上場しましたが、あまり注目を浴びることはなく、他の仮想通貨と同様、大きく値を動かすのは2017年に入ってからとなります。
その後2017年8月にCOMSAという大型ICOがあり注目を集め、さらに11月にはカタパルトの開発に前進しているというプレスリリースがあった関係で大きく値を上げました。
2018年に入ってからは仮想通貨全体の値動きが下落していく中、1月26日にコインチェック事件が起こり、一気に値を下げてしまいました。
それでも、もともとの性能が高いためにまた値を上げ始めています。
4月30日現在ではだいたい1ネム=45円前後となっています。
今後の値動きについては、やはりカタパルトの実装がどの段階で行われるかでしょう。
このシステムが導入されれば、現在イーサリアムで開発されている仮想通貨や技術は全てネムに移るのではないかともいわれており、非常に注目が集まっているのです。
また、現実の店舗などの小売りシーンでも取り扱いが増えるとも期待されており、需要が高まることが予想されます。
ただし、ネムの公式ではカタパルトの実装時期やそのスケジュールについてはまだ詳しく明言はされていません。
ネムのここがスゴイ!
Proof of Importance
ブロックチェーンの履歴が正しいかどうかを確認するため、プレイヤーはマイニングと呼ばれる行為に参加しなければなりません。
このとき、プレイヤーはマイニングに対する報酬として仮想通貨を得ることが出来ますが、誰がこの報酬を得ることになるかは「承認アルゴリズム」によって決定します。
ビットコイン(Bitcoin)ではPoW(Proof of Work)、イーサリアムではPoS(Proof of Stake)、そしてネムではPoIというそれぞれに特徴のあるシステムが導入されているのです。
ビットコインで導入されているPoWでは、数学的な演算能力がキーワードになります。
誰がマイニング報酬を得るかについて、高度な数学的な問題をコンピュータに解かせ、最も早くその答えにたどり着いたコンピュータに報酬を与えるという仕組みです。
PoSは、仮想通貨の保有量が多い人ほどマイニング報酬を得やすいという仕組みとなっています。
これは、その仮想通貨の保有量が多ければ多いほど、価値が下がる行動をすることはなくなり、むしろ価値を高める行動をするはずだという予測からこのシステムは成り立っているのです。
そして、ネムに導入されているPoIですが、基本的にはPoSと同じような仕組みです。
しかし、PoIでは保有量だけでなく、取引量も影響します。
つまり、このマイニング報酬を目的にただ大量の仮想通貨を保有しているだけでなく、しっかりと取引してその仮想通貨の流動性に貢献しなければならないということです。
PoWは優れた演算の能力を持つ大型のコンピュータが導入できる人、PoSは大量の仮想通貨を保有できるだけの資金力を持つ人がそれぞれ有利であり、これは現実世界のお金をたくさん持っている人が様々な点で有利なことと変わりません。
PoIはそうした現実世界のお金から離れ、できる限り「平等性」が保たれた「承認アルゴリズム」といえるでしょう。
ハーベスティングによる取引承認
ブロックチェーンが正確かどうかを確認して、その報酬として仮想通貨をもらう仕組みをマイニングといいますが、ネムの場合は厳密にはマイニングとは呼ばず、ハーベスティングと呼びます。
これは、ネムはすでに発行上限すべてのネムを発行済みなので、新しい通貨を手に入れているわけではないためです。
ネムはマイニング報酬の代わりに他のネムを取引する際に発生している手数料を報酬代わりに与えられるという仕組みをとっています。
ネムの取引承認は1分に1度行われており、1分ごとにランダムでハーベスト報酬を得られます。
このときに、誰に当たられるのかといえば、PoIによって決められた、保有量と取引量の多いプレイヤーの誰かということになるでしょう。
つまり、ネムの場合、ネットワークに参加しているだけで、誰でもハーベスト報酬を得られるチャンスがあるのです。こうした仕組みを以てネムは「平等性」を謳っています。
圧倒的な処理性能:カタパルトの採用へ
多くの仮想通貨プレイヤーがとりわけ注目している技術のひとつが、このカタパルトです。
カタパルトとは、Zaifを運営するテックビューロ社とNEMの開発チームが共同で開発した「mijin」というブロックチェーン技術の開発を実践で行える仕組みの中にテスト導入した技術で、大幅な処理スピードの向上を目的としています。
その速度は1秒間に平均で3,000件、最高の状態では4,000件を超えるトランザクションを処理できるほどです。
ビットコインの処理速度が毎秒14件、イーサリアムが15件ですから比べる必要もないほどの速度といえます。
現在VISAカードの処理速度が4,000~6,000件で世界最速のシステムといわれているので、それに匹敵する処理速度です。
この仕組みが導入されれば、現実世界での仮想通貨取引ではネムが最もアドバンテージを得ることになるでしょう。
カタパルトは「mijin」内ではすでに2017年の中盤に導入されていたといわれています。
そのため、ネムにも2017年の後半から遅くとも2018年の前半には実装されるのではないかと期待されていましたが、4月30日現在、いまだに導入されていないのが現状です。
2018年3月26日にカタパルトの最新版が「mijin」で導入されました。
このテストがスムーズにいけばネムにも順次導入されていくことが予想されています。
ぜひ、注目していきましょう。
ネムの課題とリスク
NEM流出事件の影響
ネムの課題として挙げられるコインチェック事件ですが、まず大事なことはコインチェック事件はネムが起こしたものでも、あるいはネムの仕組みや技術に何かしらのセキュリティホールが存在したといった事件では一切ありません。
残念ながら、コインチェック社の管理体制が非常に杜撰でこのような顛末を迎えてしまったといえるでしょう。
そのため、一時期はネムの信用問題という形で価格が下がってしまい、25円前後という底値も経験しています。
しかし、コインチェックという非常に大きな取引先を失ったともいえるわけで、ネム自身にも相当の打撃がありました。
2018年4月30日現在では45円前後と、コインチェック事件の前後では110円前後だったわけで、まだ完全に回復しているとはいいがたい状況ではあります。
まとめ
「平等性」というキーワードの元、他の仮想通貨と比べても特徴ある仮想通貨がネムです。
また、カタパルトという非常に強力なアップデートがあり、まだ日程は定まっていないものの、大きな期待の元注目されている仮想通貨といえるでしょう。
2018年中の実装が確認できれば、台風の目となるのは間違いありません。